心電図異常

心電図異常とは

心電図は心臓が拍動するために発生するわずかな電流を波形として記録したものです。
各波形にはP波、QRS波、T波などのような名前がついています。
P波は心房の電気的興奮、QRS波は心室の電気的興奮を意味します。


この心電図波形の乱れから、主に①心臓の電気の流れの異常、②.心臓の働きや血管の異常、③不整脈を見つけ出すのに役立つため、検診で広く行われています。

当院では不整脈専門医により小学校、中学校、高等学校などの
学校心臓検診で心電図異常を指摘された際の診療も行っています。
お気軽にご相談ください。

正常な心臓の電気の流れは下の図のようになっています。



検診で発見される主な心電図異常

1.心臓の電気の流れに関する異常

第1度房室ブロック 心房から心室への電気の流れが悪い状態ですが、心室へはきちんと電気は伝わっています。電気の流れがさらに悪化しなければ特に問題となりませんが、まれに何らかの心臓の病気を発見するきっかけとなります。
第2度ウェンケバッハ房室ブロック 心房から心室への電気の流れがだんだん悪くなり、時に心室へ電気が伝わらない状態です。副交感神経緊張が強い若い人に時に見られ、第1度房室ブロックと同じように一般的には特に問題となりません。
完全右脚ブロック 右脚に電気が通らなくなった状態です。電気は左脚を流れ、左心室の動きは妨げられないため一般的には問題となりません。ただし心房中隔欠損症などの病気が見つかることもあり、心エコー検査を行います。
完全左脚ブロック 左脚に電気が通らなくなった状態です。電気は右脚を流れますが、左心室の動きが悪くなるため、心不全を起こす可能性があります。心筋梗塞や心筋症などの病気が隠れていることがあり、心エコー検査をはじめとした精査を行っていきます。
WPW症候群 心房と心室の間の電気の通り道である正常の房室結節以外に心房と心室を結ぶ電気の通り道が存在する状態です。心拍数が突然早くなり、動悸やめまいなどが生じる可能性があり、ホルター心電図などの検査を行います。
QT延長 心室の電気的興奮からの回復が遅い状態で、まれに心室からの危険な不整脈が生じる可能性があります。生まれつきの場合もありますが、成人では低カリウムや低カルシウムなどの電解質異常や薬物による影響で生じることもあり、詳しい問診と血液検査を行います。
Brugada波形 右心室のごく一部に電気的な異常があり、ごくまれに心室からの危険な不整脈が生じる可能性がある心電図変化です。不整脈専門医による診察が必要です。

2.心臓の働きや血管の異常

異常Q波、QS型 心筋梗塞(心臓に栄養や酸素を送っている冠動脈が閉塞している状態)や心筋症(冠動脈に異常がみられないが心臓の筋肉が弱っている状態)を発見するきっかけとなります。
ST-T異常 女性では心臓の病気がなくとも見られることもありますが、狭心症(冠動脈が狭い状態)や肥大(心臓の筋肉が厚くなった状態)を発見するきっかけとなります。
陰性T波、平低T波 心筋症や肥大などいろいろな心臓の病気で起こってくる変化です。肺高血圧症や心房中隔欠損症など右心室に負荷がかかる病気を発見するきっかけとなることもあります。
左室肥大 高血圧症や大動脈弁狭窄症(大動脈弁の開きが悪くなっている状態)などで左心室の筋肉が厚くなっていることを疑います。心エコー検査を行い確定診断します。

3、不整脈

上室性期外収縮 心房内のある場所から通常より早いタイミングで電気的興奮が生じ脈が乱れます。ストレスや興奮などで健康な人にも見られますが、特に高齢者においては心房細動に移行する場合があり注意が必要です。
心室性期外収縮 心室内のある場所から通常より早いタイミングで電気的興奮が生じ脈が結滞します。健康な人でも見られますが、何らかの心臓病を有して出現している場合もあり、心エコー検査やホルター心電図検査が必要です。
心房細動 心房内で1分間に350〜500回の不規則な電気的興奮が生じ、脈が常に乱れた状態になります。心房収縮がなくなるため、心房内に血栓(血のかたまり)が生じ脳梗塞を発症したり、心不全にいたる可能性があります。心エコー検査を含めた精査の後、早期治療が必要です。
洞性徐脈 洞結節から出る電気的興奮が1分間に50回以下となり、脈が遅くなった状態です。多くは特に心配ありませんが、めまいや息切れなどの症状がある場合には精査を必要とする場合があります。
洞性頻脈 洞結節から出る電気的興奮が1分間に100回以上となり、脈が速くなった状態です。多くは特に心配ありませんが、甲状腺機能亢進症や心不全を見つけるきっかけとなる場合があります。